庭や公園でふと見かける可愛らしいカナヘビ。「もし飼育するなら、オスとメスをペアで揃えたい」と考えたことはありませんか。しかし、いざ見分けようとしても、その違いが分からず困ってしまう方は少なくありません。
カナヘビのオスメスの見分け方には、実は誰でも実践できるポイントが存在します。最も簡単な見分け方は尻尾の付け根を確認することですが、他にも顔つきや、時としてお腹の状態から判別するヒントが得られる場合もあります。
一方で、体の色で見分ける方法のように、広く知られていながらも正確ではない情報も存在するため注意が必要です。
特に、小さなカナヘビの赤ちゃんとなると、オスメスの見分け方の難易度はさらに上がります。この記事では、捕まえたカナヘビの性別を知りたい方や、繁殖を考えている方に向けて、失敗や後悔をしないための確実な判別方法から、よくある誤解までを網羅的に解説していきます。
この記事を読むことで、以下の点について深く理解できます。
- カナヘビのオスメスを判別する最も確実な方法
- 尻尾以外で見分ける場合の補足的なポイント
- よくある見分け方の誤解と正しい知識
- 幼体(赤ちゃん)の性別を見分ける際の注意点
カナヘビのオスメスを見分ける2つの基本ポイント

- 最も簡単な見分け方は尻尾の付け根
- オスは尻尾の付け根が膨らんでいる
- メスは尻尾にかけてなだらかな線
- 顔の形で判別する見分け方
- オスはメスより顎が発達している
最も簡単な見分け方は尻尾の付け根

カナヘビの性別を知る上で、最も確実で分かりやすい方法が、尻尾の付け根の形状を確認することです。
他の判別方法とは異なり、成体であれば個体差が少なく、一目で判断できる場合が多いため、まず初めにこの部分を観察することが推奨されます。
この違いが生まれる理由は、オスの生殖器の構造にあります。爬虫類であるカナヘビのオスは、「ヘミペニス(半陰茎)」と呼ばれる一対の交尾器を持っており、普段はこの器官を尻尾の付け根、正確には総排泄腔(そうはいせつこう)の両脇に収納しています。
そのため、生殖器を収納しているスペース分、オスの尻尾の付け根は物理的に膨らんで見えます。逆に、メスにはこの器官がないため、付け根に膨らみは見られません。
このように、体の内部構造の違いが、外見上の明確な性差として表れるのです。観察する際は、カナヘビが落ち着いている時に、真上や真横からそっと見てみると良いでしょう。
オスは尻尾の付け根が膨らんでいる

オスのカナヘビの尻尾を詳しく見てみると、後ろ足の付け根を少し過ぎたあたりから、左右にポコッと膨らんでいるのが分かります。
この膨らみこそが、ヘミペニスが収納されている証拠であり、オスであることの決定的な特徴となります。
この膨らみは、真上から見ると、尻尾の付け根部分だけがわずかに太くなっているように見え、くびれのようなものが感じられることもあります。
また、横から観察すると、付け根の下側がなだらかではなく、少し盛り上がっているのが確認できます。
ただし、この特徴は成体のオスに顕著に見られるもので、まだ若い個体では膨らみが小さいか、ほとんど目立たない場合もあります。
したがって、小さな個体で判断に迷う場合は、少し成長を待ってから再度確認する必要があります。
メスは尻尾にかけてなだらかな線

一方、メスのカナヘビは、オスのような生殖器の収納スペースが必要ないため、尻尾の付け根に膨らみはありません。
後ろ足の付け根から尻尾の先端に向かって、太さがなだらかに変化し、非常にスムーズなラインを描いています。
オスの尻尾の付け根に見られるような「膨らみ」や「くびれ」がなく、全体的にスマートな印象を受けます。
真上から見ても、横から見ても、途中で不自然に盛り上がっている部分はなく、流れるような美しい形状をしています。
オスの個体と並べて比較すると、その違いは一目瞭然です。もし複数匹を同時に観察できる機会があれば、それぞれの尻尾の付け根を見比べることで、より確実に性別を判断できるようになるでしょう。
顔の形で判別する見分け方

尻尾の付け根と並んで、オスメスの判断材料となるのが顔つきや頭部の形状です。これは尻尾ほど明確な違いではありませんが、成体同士を比較する際には有効な補助的手段となり得ます。
この違いが生まれる背景には、カナヘビの繁殖行動が関係しています。オスは繁殖期になると、より良いメスを巡って他のオスと闘争することがあります。また、交尾の際にはメスの体に噛みついて動きを固定しようとします。
このような行動のため、オスはメスに比べて顎の力が強く、頭部の筋肉が発達する傾向にあります。その結果、骨格レベルでの違いが外見にも表れ、オスらしい精悍な顔つきになるのです。
ただし、この方法は個体差も大きく、単体で見ただけでは判断が難しい場合も少なくありません。あくまで尻尾の付け根での判別を主軸に置き、参考情報として活用するのが良いでしょう。
オスはメスより顎が発達している

前述の通り、オスのカナヘビは、繁殖行動に起因して顎の筋肉が発達します。そのため、メスと比較して頭部が全体的に大きく、特にエラの部分が横に張り出した、角張った輪郭に見えるのが特徴です。
横から見ると、がっしりとした下顎のラインがよく分かります。人によっては「ホームベース型」や「逆三角形」と表現することもあるほど、その骨格は力強い印象を与えます。
対してメスの頭部は、オスに比べて小さく、全体的に丸みを帯びており、ほっそりとした優しい顔つきをしています。
並べてみれば、オスの方が明らかに「顔が大きい」と感じられるはずです。この判別方法は、ある程度成熟した個体で有効ですが、栄養状態や個体差にも左右されるため、やはり尻尾の付け根と合わせて総合的に判断することが大切です。
カナヘビのオスメスの見分け方と注意点

- お腹の色による見分け方は信頼性が低い
- メスのお腹にある噛み跡で見分ける方法
- カナヘビの赤ちゃんは性別判断が困難
- 生後3ヶ月頃からオスメスの見分け方が可能
- 抱卵しているメスはお腹に特徴が出る
お腹の色による見分け方は信頼性が低い

カナヘビの性別判断に関して、「お腹が黄色いのがメス、白いのがオス」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、この情報に基づいて性別を判断するのは非常に危険であり、誤った認識であると言えます。
確かに行動範囲や食性によって体の色に変化が出ることは考えられますが、お腹の色と性別を直接結びつける科学的な根拠はありません。実際、飼育下や野生の個体を観察すると、お腹が鮮やかな黄色いオスもいれば、白っぽいメスも数多く存在します。
お腹の色は、遺伝的な要因や個体の栄養状態、年齢など、様々な要素が絡み合って決まる「個性」の一つと考えるべきです。
したがって、お腹の色は性別を判断する上での判断材料にはなりません。この俗説に惑わされず、前述した尻尾の付け根や顔つきといった、より信頼性の高い物理的な特徴で判断するようにしてください。
メスのお腹にある噛み跡で見分ける方法

繁殖期のカナヘビを観察していると、オスがメスの腰のあたりに噛みついて交尾を行う様子が見られます。この交尾時の行動によって、メスの体側には特徴的な噛み跡が残ることがあります。
この跡は、V字型やU字型、あるいは歯の形が分かるような小さな傷として確認できる場合があります。もし、カナヘビの脇腹から腰にかけてこのような跡があれば、その個体は交尾を経験したメスである可能性が非常に高いと考えられます。
ただし、この判別方法にはいくつかの注意点があります。 まず、交尾を経験していない若いメスには当然ながら跡はありません。また、噛み跡は脱皮を繰り返すうちに薄くなったり、完全に消えてしまったりすることもあります。
逆に、オス同士の縄張り争いなどで体に傷がつく可能性もゼロではないため、「跡がないからオス」と断定することもできません。あくまで「跡があればメスである可能性が高い」という補助的な情報として捉えるのが賢明です。
カナヘビの赤ちゃんは性別判断が困難
生まれたばかり、あるいは全長が数センチ程度の小さなカナヘビの赤ちゃん(幼体)の性別を外見から判断するのは、専門家でも非常に困難です。その理由は、幼体の段階では性的な特徴がまだ体に現れていないためです。
オスを見分ける上で最も重要なポイントである尻尾の付け根の膨らみ(ヘミペニス)も、生まれてすぐの段階では全く発達していません。そのため、オスの赤ちゃんもメスと同様に、尻尾の付け根はスマートな形状をしています。
また、顔つきや骨格の違いも、体が十分に成長しなければ現れません。このため、どんなに注意深く観察しても、幼体の性別を確実に見分ける方法はないのが現状です。ペアでの飼育を目的として幼体を捕まえてきた場合、性別が分かるまでどちらか分からないまま育てることになります。
生後3ヶ月頃からオスメスの見分け方が可能
判別が難しいカナヘビの赤ちゃんですが、成長するにつれて徐々に性的な特徴が現れ始めます。では、いつ頃からオスメスの見分け方が可能になるのでしょうか。
これは個体の成長速度や栄養状態によって前後しますが、一般的には生後3ヶ月を過ぎたあたりから、少しずつ違いが見られるようになります。早い個体では、この時期からオスの尻尾の付け根にわずかな膨らみが確認できるようになります。
そして、生後半年から1年も経てば、ほとんどの個体で性差が明確になり、誰でも簡単に見分けがつくようになります。
もし確実に性別を知りたいのであれば、焦らずに体が大きくなるまでじっくりと飼育し、成長を待つのが最も良い方法です。カナヘビの成長過程を楽しみながら、その変化を観察するのも飼育の醍醐味の一つと言えるでしょう。
抱卵しているメスはお腹に特徴が出る

春から夏にかけての繁殖期(主に5月〜8月頃)には、メスであることを一発で断定できる特別なサインが現れることがあります。それが、抱卵によるお腹の膨らみです。
産卵を間近に控えたメスは、体内に形成された卵によってお腹が大きく膨れ上がります。普段のスマートな体型とは明らかに異なり、横から見るとお腹が地面に付きそうなくらいパンパンになっているのが特徴です。
個体によっては、皮膚が引き伸ばされて、お腹の側面から中にある白い卵の形が透けて見えることさえあります。このような状態の個体を見つけた場合、それは間違いなく産卵を控えたメスです。ただし、これは繁殖期の限られた期間にしか見られない特徴であるため、一年中使える判別方法ではない点に注意が必要です。
カナヘビのオスメスの見分け方:まとめ
- 最も確実で簡単な見分け方は尻尾の付け根の形状を確認すること
- オスの尻尾の付け根はヘミペニス(生殖器)を収納するため膨らんでいる
- メスの尻尾の付け根には膨らみがなくスマートな形状をしている
- 真上や横から見ると尻尾の付け根の違いが分かりやすい
- 成体のオスは顎の筋肉が発達し顔ががっしりとして見える
- オスの頭部はメスに比べて大きく角張った印象を与える
- メスの顔つきはオスに比べてほっそりとして丸みがある
- 顔つきでの判断は補助的なもので尻尾と合わせて確認する
- お腹の色が黄色いか白いかで性別を判断することはできない
- お腹の色は性別ではなく個体差によるもの
- 繁殖済みのメスの脇腹にはオスに噛まれた跡がある場合がある
- 噛み跡があればメスの可能性が高いが絶対的な証拠ではない
- 生まれたばかりの赤ちゃんの性別を外見で見分けるのは不可能
- 生後3ヶ月頃から徐々に性差が現れ始め判別可能になる
- 繁殖期に抱卵しているメスはお腹が大きく膨らむ
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